『確かに、韓国の本社に異動願いは出していたけど、専務って!
俺も58才だから、そろそろ楽させて貰おうかと思ったのに、まだコキ使うのかよ。』
「ハハハ!
そりゃ仕方ないでしょ。
うちのアボジ(親父)も、今年の12月で60才ですからね。
働けるうちは働く!動けるうちは動く!って人ですからね。
それに、夫婦で韓国の実家に戻れて、尚且つ専務取締役ですからね。
アボジ(親父)も、安心して会長の仕事にも専念出来ることでしょう。
向こうには、副社長の李 智盛(イ・ジソン)が居ますけど、まだまだ若いから色々と指導してあげてください。
それに、本社は派閥が強いから、力になってあげてください。」
『そうだな。
智盛(ジソン)も、40才になったばかりでいきなりの副社長だからな!
分かった。任せとけ!
おれの最後の仕事として、智盛(ジソン)を立派な副社長に育て上げるよ。』
「宜しくお願いします。」
『こっちは、白川GMが支社長か!
まぁ、奴が支社長なら、誰も文句は言わないだろう。
ゼネラルマネージャーの後任は、もう決まっているのか!?』
「はい。
桧山部長を、後任に決めております。
本人には、先週通達してどうにか了承して貰ってます。」
『桧山かぁ!
あいつなら適任だな!
長年、この会社で頑張って来たけど、奴ほど頭の切れるのも、そうそう居ないからな。』
「ですよね。
でも、最初は本人もかなり渋ってましたよ。」
『どうして!?』
「白川GMの貢献がデカかったからですよ。」
『奴は、自分の実力をもっと知るべきだな。』
「ですよね。
企画力、行動力、仕事を取ってくる早さに、スタッフの管理と包容力、発言力に機転の早さと、挙げたらきりがないくらいずば抜けてますから。」
『たまに俺様になるところも面白いしな!』
「奥さんと、娘の前では、可愛いですよ。」
『それは俺もおんなじだ!ハハハ!
ところで、本堂は、制作部 部長の後任を探していたけど、ヤッパリ天道課長がなるのかい!?』
「はい。
天道本人は制作部の音響制作課への異動願いを出していたんですが、音響制作課も制作部の一部なんだからと説得して、制作部3課をまとめて貰うことにしました。」
『制作部3課!?
制作部って、音響制作課と、技術制作課の2課しか無かったはずじゃ!?』
「はい。そうです。
実は今回、新たな課を作りました。
制作部 企画制作課と言うのですが、今は、CDやDVDを作ったり、デジタル音源の楽曲配信、映像配信、カラオケ配信やありとあらゆるものに手を拡げて、はっきりいって手詰まり状態なんですよ。」
『まぁ、確かにそうだな。』
「そこで、新たな何かを考え出してくれる企画室を制作部でも設けようと思って、今年は特に科学技術専門学校の卒業生を4名そこに入れるつもりです。
そこの室長には、元海外事業部の企画課 課長を抜擢しました。」
『安岡課長かぁ…、奴なら任せられるな。
なかなか良い人事するじゃないか。
親父さんに似てきたな。
会長の人事は、皆が納得の行く人事をするからな。
人事部長は、いつも驚いていたけどよ。』
「そうでしたね。
後は、新星MUSIC日本支社だけでも2000人近くに膨らんできましたので、各部署を細分化して人員を振り分けて行こうと思います。
そのためにも、スタッフ全員の能力と本人の希望をもう一度調べて、来年はもっと凄い人事異動を行うつもりです。
ですから、李支社長も、まだまだノンビリなんて言わないで、しっかり本社を守っていてくださいね。」
『親子揃って人使い粗いんだから。
分かったよ。
頑張れ若社長!』
「マジで頑張らないとなぁ。
俺に反対している営業部長や地方の所長クラスは、一斉送信で社内アンケートを送っても、それすら送り返してくれないからなぁ……。」
『まぁ、これからだよ。
社長に就任して、まだ2年しか経ってないのに、何を言ってるんだ。
お前の親父が集めてきた人材なんだから、息子のお前よりも、会長の方に向いてしまいがちなのは仕方のない事じゃないか。
これからは、お前自身が会長が遣ってきたみたいに、新たな人材を見付けて、遣っていけば良いだけの事。』
「そうですね。
頑張ります。」
『頑張れ、頑張れ!』
「ところで、向こうには李支社長の娘さんが遣ってるアトリエが在るんですね。」
『まぁな。
画家に成りたいって外国に行ったきりだったけど、やっと韓国に戻ってきたよ。
フランス人の亭主と子供の3人でソウル市内に居るよ。』
「そうでしたか。」