ハラボジ(お祖父様)が、俺の両親と共に韓国へ戻ってしまって10日が経った。



俺は毎日、社長としての業務に終われていた。



それでも、たまにはテレビに出演してギターを弾いたりもしている。



妹の荷娜(ハヌル)は、子育てが落ち着いて、今年の4月から本部長としての職務を遂行してくれてる。



主に社外との調整や、各部署との連携をスムーズにするために、新星MUSIC日本支社での殆どの業務を把握してくれてる。



それをサポートしてくれてるのが、副本部長のソナだ。



KYUは、以前の俺のようにアーティストのKYUとしての 顔とは別に、新星MUSICの海外事業部 部長としての顔も持っている。



主に中国や台湾、インドネシアの方で飛び回っている。



彼には、双子の池(チ)兄弟の兄、仁哲(インチョル)が、担当秘書として付いている。



弟の池 義徳(チ・ウィドク)は、類いまれなる発想力と機転の利く頭を武器に、今では企画開発部の課長をしている。



俺が以前観て驚いた彼のビジョンとは、これの事だったのである。



いずれは、企画開発部の部長迄上がってこれる実力が備わっているのだ。





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年が明けて、バタバタと忙しく業務をこなしているうちに1月、2月と過ぎていき、3月に入り、来年度の人事発表の日が遣ってきた。



各部署にはパソコンを使って社内報を送るのだが、この時期だけは皆ピリピリしている。



人事課の主任と課長が、全課の人事異動書を手に、俺の部屋に遣ってきた。



コンコン!



「はい、どうぞ!」



『高山社長、全ての人事異動書をお持ちいたしました。

確認頂き、間違いがなければ、明日社内報を発行致しますので。』



「それでは、そちらに座ってお待ちください。

直ぐに確認しますので。」



『そんなに大量の異動書を確認するには、3時間以上掛かるかと思われますが……』



「心配しないで下さい。

異動するスタッフ全員の情報は、全て私の頭の中に入ってますから。」



『200人近く居るんですよ?』


人事部の課長と主任は、目を丸くして驚いていた。



「秘書に飲み物を持ってこさせますから、飲んでてください。

10分少々待っててくれたら、その間に終わらせますから。」



インターフォンで秘書に飲み物を2つ頼んで、その間に人事異動書を高速でチェックしていく。



もちろん、封印の指輪を外して、力を開放してのチェックだ。



頭の中にインプットしてある人事異動の情報と異なりのある書類だけが、はじき出されるように書類にパワーを送り込んでの作業は、ものの3分で終了した。