朝9時丁度にマンスオジサンがドアをノックしてきた。
既に目の覚めていた俺は、ドアを開けてコーヒーを受けとるとベットの脇にあるテーブルに置き、カーテンを開けてウッドデッキに繋がる掃き出しのガラス扉をあけた。
コーヒー片手にデッキに出て、アンティークのベンチに腰掛け、マンスオジサンが煎れてくれたコーヒーを味わう。
至福の時間を過ごしていると、匂いに誘われたソナも目を覚まし、コーヒー片手にデッキに遣ってきた。
『オッパお早うございます。』
「ソナ!
お早う。
良く寝れた?」
『昨日、遅くまで起きてたからグッスリよ。
まだちょっと腰がダルいわ!』
「ハハハ、初めてでも無いのに、新婚初夜だと思ったら何だか張り切っちゃって!
俺は全身がダルいかも!
後でシャワー浴びずに浴槽にお湯を張って半身浴でもすっかぁ!」
『私はそれより海に行きたいよ。
連れてって♪』
「そうだな。
そうだ、この2階の廊下の突き当たりは、オールガラス張りの部屋になっているんだげど、目の前の海がパノラマで一望出来るんだよ。」
『本当に!?
見に行こうよ。』
「じゃあ、このガウンでも掛けとけ!
外からも丸見えの部屋だかんな!」
『は~い。』
寝室を出て、幅の広い廊下を二人並んで行くと突き当たりに白い扉がある。
ソッと開けると、いきなり目の前に海が拡がった様な錯覚を起こしてしまうほど殺風景でイスとテーブルが有るだけで、後はガラス張りの先に海が拡がっているだけだった。
ただそれだけに素敵だった。
「この部屋からだと、太陽が部屋の左から昇って右へ沈んで行くのが全部見えるんだよ。
眺めは最高!
でも、真夏はこの部屋の中は地獄の様な暑さだよ!」
『エアコン付けないの?』
「アボジ(親父)が、この部屋の景観を損ねるからって付けないんだよ。
せめて、天井くらいガラス張りにせずに、天井からエアコンの冷気が出るようにしてくれれば、海を見ながらワインとか、寛いだ時間を過ごせるんだけどね!
この時期は、後数時間もしたら灼熱地獄だよ。
ダイエットのためにサウナの様に籠って汗をかくには最高だけどね。」
『もう既にじっとり汗が出てきたよ。
オッパ、お風呂入ろう♪』
「そうだな。
朝飯食ったら、腹ごなしに砂浜でも歩くか!?」
『うん!
ところで、優珍オンニ(ユジン姉さん)と友植オッパ(ウシク兄さん)は何時頃済州(チェジュ)に着くの!?』
「今日は木曜日だから、10時20分くらいかな。
丁度仁川を離陸して旋回して南に進路を向けた辺りだよ。」
『じゃあ、こっちに着くのは11時位なんですね。』
「そうだね。
さて、それじゃあマンスオジサンに朝食を頼んで、出来るまで風呂に入ろうぜ!?」
『そうだね。
ヤバイ!
この部屋、ドンドン暑苦しくなってきた。
もう出よう!』
「だな!」
『オッパ、お風呂一緒に入ろう♪』
「あぁ!
先に入ってて。
マンスオジサンに朝食を頼むから。」
と言うと、廊下に備え付けて有る壁掛けのインターホーンの受話器をとり、マンスオジサンの専用の部屋のボタンを押した。
『モシモシ、チャンス坊っちゃん。
如何されましたか?』
「30分後に朝食をお願い出来ますか?」
『はい、大丈夫です。
何かメニューにご要望が御座いましたら‥』「おまかせしますので、宜しくお願いします。」
と言うと、快く引き受けてくれたマンスオジサンは、受話器を下ろすと、早速キッチンへと向かった。
チャンスとソナは浴室へと向かい、浴槽にお湯を張り、暫しのんびりと浴室の窓から海を眺めながら、昨晩の疲れを取っていった。