20分間ただじっと座っているだけでは退屈なので、力を使ってこのジェイクと呼ばれた男のビジョンを覗いてみることにした。



なるほど!



ヘビーメタルバンド【ザ・キングバード】のドラムスのショーンの弟か!



恋人がいて、近々プロポーズする予定なんだ!



巨体に似合わず気が小さくて、見た目だけでビビらせているのか。



色々見えてきた。



子供好きで優しい、家族思いの男だった。



あまり力を使い過ぎると、こちらの体力も消耗して仕舞うので、この辺で止めとくことにした。



暫くすると、マンションの呼び鈴がピンポーンと鳴った。



『ヨッ!ジャッキーにキャロル、良く来たね!

旨いもん食いに行く前に、面白い余興が有るから、楽しんでくれよ。』



「何かしら?

楽しみ!」



『ジェイク、連れてこい!』



と、大声でおらぶ声がこの部屋に届いた。



ジェイクは、顎で俺について来いと指図する。



俺はゆっくりソファーから立ち上がり、リビングの方に遣ってきた。



俺の顔を見たジャッキーとキャロルは、ひきつった顔でこちらを見て呆然としていた。



白々しく俺は、最初に俺達の前で名乗った偽名で呼んだ。



「ジュリーにマイキーじゃないか!

元気にしてたかい?」



『あんたなんか知らないし!』



「何を言ってるんだい?

これ見てごらんよ。」



と言って、携帯電話のギャラリーホルダーから二人がジムの両サイドに座って微笑んでいる画像を見せた。



すると、



『うそ!

あの時、貴方は携帯で写真なんか取らなかったじゃない!

ジムのデジカメだってセルフォンだって破棄したし!』



「何自分から認めてんの!?

焦ってるね?

ロバート、どうします?

ハラキリ遣りますか?」



『ちょっと待ってくれミスターチャンス!

キャロル、さっき言ってたのは、どういう事か正直に聞かせて貰おうか?』



「アッ!」



『どうしたんだミスターチャンス?』



「彼女達2人の顔写真って、今日のABC放送の昼と夜のニュースに出ることになってますよ。

ジムの訴えで、この2人に20万ドル以上するギターを盗まれたから、懸賞金10万ドルつけるから、捕まえてくれって言うニュースなんだけど!」



『ジャッキー、キャロル、どうするんだ?

泥棒になって、親父さんの顔に泥を塗るんか?

早くにお袋さんを無くしたお前達を、男手1つで育ててくれた親父さんなんだぞ!』



「だってぇ、ロバートは負けちゃったのに、ジムの奴勝ち残りやがったから、腹が立って‥‥‥。」



『俺は、そんな事望んだか?

それに何だその言葉使いは?

バカなビッチと同じ様な言葉使うんじゃ無いよ。

俺の為なんて言わせねぇからな!

ギターは何処に有るんだ?』



「洗礼の教会の2階に有る倉庫ん中に有るけど‥‥‥‥‥」



『有るけど?

何なんだ?』



「携帯電話とデジカメとハンディカムとMP3プレーヤーは、ハドソン川に沈んでる‥‥‥」



『10,000$は?』



「教会のドネーションボックスに入れちゃった!」