「麻子、雑巾持ってきな。」


麻子は耳を塞いでガクガク震えていた。

佳奈も麻子と同じようにこれにはびっくりしたのか少し怯えているように見えた。

想像していたよりも残酷だったのだろう。


麻子は愛莉に名前を呼ばれた瞬間びくっと身震いをしたが、ゆっくりと愛莉のほうを向いた。

「聞こえなかった?早く雑巾を持ってくるのよ!」


佳奈もまだ何かするの?といいたげな表情を隠せないでいる。


麻子は逃げるように飛び出し、愛莉に言われた通り、黒ずんだ雑巾を一枚持ってきた。


その雑巾をトイレの水道で洗い出す。

私はただひたすら口の中の痛みに耽(ふけ)っていた。



「血がでて可哀想だから拭いてあげるね?」

ボタボタと落ちてくるほど水が含まれた雑巾は麻子の手から愛莉に渡された。



また髪をわしづかみにされ、グイッと愛莉のほうに引き寄せられる。

「まずはうがいからしようか!」


笑顔で愛莉は私に笑いかけ、雑巾を私の口の上に持ってきてそのまま握り締めた。


ボタボタと雑巾の汚い水が口の中に入ってくる。


口を塞ごうにもさっきの痛みで口周りが麻痺していて動かない。


やめて・・・・・・!


私が唸り声を上げるたびに血と雑巾の水が混ざった液体を少しずつ飲んでしまう。