「ヒッ」

マーレは小さく悲鳴をあげると、座ったまま数歩さがった。

赤く広がったカドレの血は、部屋の中で向かい合うノエルとギルをうつし出していた。

「今までどうしていたの、ギル」

ノエルは、静かな声でそう言った。ギルは、カーペットの上にあぐらをかいている。マジャッラもいた。

「あいつだ。バルバラが、悪の魔法をかけていたんだ」

「何ですって!?」

ノエルは、思わず声をあげた。

「シッ!」

ギルはとっさにノエルの口に手を当てた。

「あ……ごめんなさい」

ノエルは、しまった、というふうに謝った。

「それで、悪の魔法って?」

「異国の人間が入れないように、この城の周りに魔法陣が敷かれてあった」