……と念じてみたものの。


風見歩には、全く帰る気はないらしく……


鞄から文庫本を取り出して読書を始めてしまった。


さすがに、これ以上は言えないよなぁ。


あくまで、むこうは“厚意”で待っててくれてるわけだし。


ここで無理矢理追い返したら、私ってとんでもなく嫌なやつだよね?



……仕方ない。


さっさと終わらせて、明るいうちに帰れるようにしよう。


これでも、化学は得意なんだよね。


授業は出てなくても、ちゃんと勉強して成績はキープしてるし。


きっと、すぐに終わる。


嫌いなヤツと同じ空間にいるだけで、息が詰まりそうで…気分は最悪だけど、我慢だ。


無視。無視。集中。集中。


よし!


気合いを入れて、私は机に向き直った。