「“浅海嵐士”って言ったら、めちゃくちゃ有名人じゃん。」

「……え?」

「この学校の卒業生だろ?で、代々語り継がれてる“伝説の男”。」


“伝説”……?


「派手な噂と数えきれないくらいの武勇伝。だいぶ“ご活躍”だったみたいだからな。」


さらっと、完全に“他人事”って感じに言って。

再び、俺のノートを写し始めるダイスケ。

ペンを動かしながら、


「だから、浅海はアレでも許されるんだよ。」


ぽつりと呟いた。


「…へっ?」

「あんだけサボりまくって休みまくって…自由奔放にしてても、たいしたお咎めもないのは“兄貴”の力。」


……へ?

ハテナマークを浮かべる俺に気がつくこともなく、ダイスケは続ける。


「先生たちも強くは言えないんだろ。“浅海嵐士”が怖くて。」


怖い?


「機嫌を損ねて報復でもされたら大変だからな。

なんせ、野性の熊を素手で倒したって噂もあるくらいだから。」