「……え?」


そのまま…
彼女の髪にキスを落とそうとした…とき。

いきなり、ものすごい力で押し返された。


「浅海…さん?」


不意討ちだったせいか、俺の身体は簡単に突き放されて……

彼女に触れていたはずの掌が、虚しく宙に浮いていた。



「えっ?何?どうしたの?」


彼女を見れば、顔を歪めて今にも泣き出しそうな表情をしていて…

俺の視線に気づくと、すぐに俯いてしまった。

そして、



「……ないで。」



小さく聞こえた声。



「え?」



彼女の口元に耳を寄せてみれば…



「そんな身体で触らないでっ」



聞き取れたのは、意味不明な言葉。



「え?どういう意味?」



身体?って、え?



「……匂い。」

「ん?」

「…女物の香水っ。
そんなものプンプン漂わせて…私に近づかないでっ」

「……へっ?」

「そんな…どこで誰と、何したかわからない身体で…気安く触らないでよっ」



……はいっ?