「何飲む?何食べる?何歌う?あ、一緒に歌おっか?」


歌本やらメニューやらを広げて、さっきから忙しなくしゃべり続けるレナちゃん。

……なんか、妙に距離が近いんだけど。

ひそかに不快感を感じながらも、とりあえず微妙な笑みを浮かべておく。



「あーっ。レナばっかりずるーい!私もっ」



噂の“カオリちゃん”もやってきて。



「えーっ?カオにはあの子がいるでしょう?」



ちらっと視線を向けながら、俺の腕に絡みつくレナちゃん。

人工的な甘い香り。

女の子特有の柔らかさ。

普通はドキッとするものなのかもしれないけど…

なんていうか……


「あぁ…」


レナちゃんの視線の先を確認して、小さくため息をつくと、


「だって、ダイスケくんはあっちに夢中なんだもん。」


やれやれと言うように肩をすくめて、レナちゃんとは反対側の…俺の隣に腰を下ろした。




……ダイスケのやつ。

熱唱してる場合じゃないでしょ?

何しに来たの?

恨めしく睨んで見るも、全く気がつかないで自分の歌に浸ってるし。



「それに私、ホントはダイスケくんじゃなくて、歩くんに会いたかったんだよね。」