「……浅海さん?」
気がつけば、本物の彼女がすぐ傍に立っていて。
「何よ、これ!」
目が合うなり、俺に向かって、何かをずいっと突き出してきた。
……何?
「こんなのいつの間に付けたわけ?」
「え?ああ…」
「勝手なことしないでくれる?」
なんか、またすごく怒ってるけど……
それがまた可愛いんだよね…と、そんな場合じゃないか。
「可愛いでしょ?俺のとお揃いだよ。」
彼女の手からそれを受け取って、ついでに自分のも取り出して並べて見せた。
うん。
やっぱり、2つ揃ったほうが可愛いな。
「昨日、たまたま見つけてさ。浅海さんも欲しがるだろうなと思って。」
「なっ…欲しくないわよ。こんな悪趣味なやつっ。」
「えー?可愛いじゃない?」
「どこがっ?そもそも、私はケータイには何も付けない主義なの!」
そう言って、俺の手から、真新しいストラップの付いたピンクの携帯電話を奪った。
……可愛いのに。