「なっ…やっぱり触ったんじゃないっ。痴漢!変態!」
ガバッと布団から顔を出した私に、
「そんな…本当にちょこっとだよ?それで我慢したんだから、立派でしょ?」
悪びれることなく、きょとんとしている。
「信じらんないっ。
変態だとは思ってたけど、病人の寝込みまで襲うとは思わなかったっ!」
「わっ。痛いって。
それ、カリンのクッション……」
適当に掴んで振り回したそれは、あの赤いハート型のクッションで……
「ンニャーッ!」
それを取り返そうとしているのか、黒いのが飛び付いてきて……
「ちょっ…離してよっ」
いつの間にか、奪い合いの引き合いに。
ムカつくなぁ。
猫相手に…と思いつつも、引くのも悔しくて。
しばらく、引っ張り合いが続いた…そんなとき。
「ハイ。そこまで、ね?」
ふわりと身体が宙に浮いて、
「浅海さんはこれをカリンに返して。
カリンも。浅海さんは病み上がりなんだから、無理させちゃダメだよ?」
王子が、私たちからクッションを取り上げた。