「よかった。」
至近距離で、にっこり微笑む“王子様”。
瞬時に、身体がカァーッと熱くなる。
「浅海さん、あのまま倒れちゃうんだもん。すごい心配したんだよ?」
顔は離れたものの、その瞳は私を捉えたままで。
そっと伸びてきた手が、私の髪をやさしくすくい取っている。
……ヤバイ。
そんな柔らかい瞳で見つめられたら、私……
ただでさえ、最近おかしいのに……
「もうホント、どうしようかと思ったよ。」
「ごめ…ん」
「まさか、浅海さんの口からあんな言葉を聞くとは思わなかったし」
「……へっ?」
髪から頬へと指をすべらせながら、悪戯な笑みを浮かべる王子。
私、何か言ったっけ?
何せ、記憶が……
「“行かないで”なんて、あんな顔で言われたら……
熱さえなかったら、あの場で襲ってたよ?」
「……はっ?」
「運ぼうと思って抱き上げたら、くっついたまま離れないし…」
「うそっ?」
「仕方ないから、家に連れて帰って来ちゃったよ。」