「……あ。浅海さん、起きた?」



記憶を手繰り寄せつつも、ガラス玉みたいな瞳と睨み合うこと数秒。


後ろから聞こえてきた呑気な声に、



「ニャッ!」



すぐさま反応した黒いの。



「ちょっ……」



私のことを押し退けて、一直線に向かって行きやがった。


……思いっきり踏まれたんですけど。



「あれ?浅海さんの隣で寝てたんだ?そっかー…
カリンも心配だったんだね?」


「ニャー」



……どうだか。


お行儀よくお返事しちゃってさ。

さっきは明らかに“敵意”むき出しの眼で見てたくせに。



「浅海さん、すごい熱だったもんねぇ…どう?少しは落ち着いた?」


「わっ……」



いきなり、後ろから伸びてきた手。


のけ反ってしまった私のことなどお構い無しに、大きな掌がおでこに触れた。



「昨日よりはマシ…かな?うーん…ちょっとごめんね?」


「えっ?」



ぐいっと引っ張られたかと思うと、抱えられるように後ろを向かされて。


気づいたときには……



「あ。大丈夫っぽいね。」



コツン、と額同士が重なっていた。