「外、寒かったでしょ?」
走ってきた…らしい本人は火照ってるみたいだけど、抱きしめた身体は、やっぱりひんやり冷たい。
「あ。でも、これがあれば大丈夫か。」
ぎゅうぎゅうに締め付けていた腕を弱めて、彼女の首に巻き付いたマフラーに触れる。
「嬉しいな。ちゃんと使ってくれてるんだね。」
「違っ…これは、くるみが……」
少しだけ自由になった彼女が、俺を見上げて慌てたように言ったけど……
「顔、赤いよ?」
これは、走ってきたから…じゃないよね?
「気に入ったなら、ずっと使ってていいから。冬限定の“首輪”ってことで。」
「なっ…」
そう。
これは、元々俺のもの。
あまりにも寒そうだから、貸してあげて…を繰り返してるうちに、彼女に馴染んでしまった。
だって、何回言ってもマフラーはおろか、コートすら着てこないんだもん。
女の子として、ダメだと思う。
「さ。いつまでもここにいても寒いから……中、入って?」