……と思いつつも。


並んでプリントを解き始めて、数分。

やっぱり、隣が気になって仕方がない。



だって……


ふわりと香る甘い匂いはもちろんのこと。

肩が触れるくらいの距離。

ペンの音しかしないくらいの静けさ。

彼女の息づかいとか体温とか…妙にリアルで、いつも以上に、その“存在”を近くに感じる。


ちらっと覗き見れば、
いつになく真剣な横顔があるし……



……これは、ダメだ。



「ちょっ…」



気づけば、無意識のうちに手は伸びていて。



「触らない、って言ったでしょ?」



さっき同様、俺の手は彼女の髪に触れていた。



「ごめん。やっぱり、無理。」



好きな子がこんなに近くにいるのに、手を出すなって言うほうが無理だ。



「でも大丈夫。浅海さんの邪魔はしないように、今は髪だけにしておくから。」


「はぁっ?」


「だから、気にしないで続けて?」