兄にベタつく飯豊を見ていられなくなった私は、
直ぐに教室から飛び出した。




飯豊さんは一瞬、私を見て笑った気がした。




それは




怖い笑みで




鳥肌が立つ。




何を考えているの?





お兄ちゃんも




本当に飯豊さんが好きなの?




あの二人に



いったい何があったの?





「はぁはぁ…」




思いっきり走った末、たどり着いたのは秘密じゃなくなってしまった木陰。




なんだか




あの時と似てるなぁ〜




なんて考えながら、木陰の大きな木にもたれかけながら腰を下ろした。




空を見ると、雲が風に乗って泳いでいる。




授業のチャイムも無視して、

頬を伝う涙も無視して、



無心に空を見つめていた。




不思議なくらいに青い空



もうすぐ夏だというのに



こんなにも世間は明るいのに




こんなにも空は青く、広いのに





私の心は



暗くて



悲しくて



悔しくて



灰色で



虚しい。