授業が終わり、ホームルームが始まった。

ふと上杉くんの席を見る。


…いない。




「遼、また女じゃない?」


あたしの真後ろからボソっと真田くんが言った。




「……」




…いつもの事じゃん。
別に…どうせ電話しょ。

今日はあたしと帰るんだし…





ホームルームが終わって、皆が次々と教室をあとにする。



気がつけば、教室にはあたしと真田くんだけ。



真田くんはあたしの前にある教卓に腰かけて、ニコニコしながらあたしを見ている。



「…真田くんなんで帰らないの?」



「…だってさ。」




「だって…?」




「暇だから♪」

真田くんはニカっと笑う。



「あ…あたしは上杉くんと約束してるの」



そう言ったら真田くんは《えっ?!》という顔をした。


そしてすぐに携帯を取り出し、どこかに電話をしだした。



真田くんは右手の人差し指と親指の2本で携帯を持ち、
左手で教卓をトンットンッとリズムを刻む。



「あっ!俺!今どこ?」



…ちょっと沈黙があって…



「…ちょっと代わるわ…」



真田くんはそう言うとあたしに携帯を渡した。



…へ?あたし?



携帯を受け取り、なぜかあたしも人差し指と親指の2本で携帯を持ってしまった。



「…もしもし?」



「ごめ〜ん!琴女ちゃん!!忘れてた!!!」


上杉くん?!




「へ??」



「また今度一緒に帰ろうね♪」



「……」



携帯の向こうから《遼、誰??はやくしよ♪》と甘い女の子の声が聞こえる。




あたしは、無言で電話を切った。