お父さんがいなくてお金がないこと。
バイトが禁止のことを知りながらバイトをして、その雇い先が迅の家だったこと。
養うことことを理由に結婚したこと。
家族を守りたかったこと。
上手く言葉になっていただろうか。
順序はバラバラ。
手探りをするかのように言葉を捜しては口に出す。
美沙は時たま頷くだけで、何も言葉にはしなかった。
そして最後に言ったのは迅が出て行ってしまったこと。
「迅に…逢いたい…っ」
搾り出すようなその言葉。
それは正直な想いだった。
何よりも強い気持ちだった。
「瑠璃」
あたしの話が終ったと思ったのか、美沙はゆっくりと口を開いてはあたしの名前を口にした。