あたしが再び窓の外へ視線を向けると、迅は校舎内へと入っていってしまった。
見えなくなった。
あたしはそれでも迅が入っていった扉を見つめる。
どうしようもなく会いたい。
どうしよう。
でも本当は分かっている。
どうしようもない。
すると不意に、あたしの頭にポンと手が置かれた。
「…なんて顔してんのよ」
小さく、そしてどこか悲しそうな寂しそうな表情で笑いながら美沙は言う。
あたしはそんな表情の美沙を見つめ、言葉を捜す。
けれどそれよりも前に、美沙が口を開いた。
「何かあったんでしょ?」
それはゆっくり語りかけるような声音だった。