なんだか初めて見る不安そうな顔に、思わずあたしは小さく笑い声を上げた。
笑うあたしに、深谷はムッとして言う。
「…なんだよ」
「多分風邪だよ」
左手で深谷の頬を摘みながら横に引っ張る。
にーっと笑って見せれば、深谷も小さく笑ってあたしの頬を摘んだ。
そしてにやりと笑っては意地悪そうに言う。
「重かったんだからなー」
「げ…っ!! 超失礼!!」
にゅーっと頬を強く引っ張ってやれば、同じように引っ張られる。
「泣きそうな顔してたくせに!!」
「な…っ!! んなことあるか!!」
頬の引っ張り合いっこ。
くだらないお遊び。
だけれど、あの静か過ぎる空間にいたせいか、こうして尋ねてくれた深谷に心が温かくなった。