「だけど、今日、前科者の中から二人を見つけた。
奴らは山城組という暴力団だった。
龍雄、吉沢百合子の居場所、心当たりはないか。
あいつの親は最低だ。
いないほうが良い、という感じで話していた。」
話している内に真輔の脳裏には、
百合子の母親の態度がまた浮び、
無意識の内に興奮したような話し方になっていた。
「どうして吉沢百合子を。」
しかし龍雄は百合子の名前を聞いても
不可解そうな言葉を出しただけだった。
「知らないのか。龍雄が助けた女は彼女ではないのか。なあ。」
と、真輔は信一の顔を見た。
龍雄も黙ったまま信一を見ている。
「あ、あの… あのときあいつの生徒手帳が落ちていたから…
俺、逃げる後姿しか見ていないけど… 違うのか。」
が、龍雄はその言葉には反応せず、
何か思い出そうとしているように宙を見ている。
どうも想像していたように、
スムーズに事が運ぶとは限らないようだ。
龍雄の様子に真輔はそんな事を考えた。
「慌てることはない、ゆっくり思い出せば良いよ。
意識が戻ったところだから… 」
真輔は心からそう思っている。