「龍雄… 俺… 役に立たない奴で… ごめんな。」
しばらくして信一はやっと声を出し、
嬉し泣きをしている。
「バカ、泣くな。お前に怪我がなくてよかった。
ところで真輔、お前、何故ここに。」
龍雄は喧嘩になる前の事をはっきりと覚えているようだ。
信一を逃がしたまでは覚えている。
しかし真輔は…
「あ、あのな、龍雄…
あの時、真輔に会って… 助けを… 俺、喧嘩は…
だけど真輔は強いから…
先に警察を呼べば良かったけど、
真輔がいたから… ごめん。」
信一の言葉に事情を察した龍雄…
改めてゆっくりと真輔を見た。
「真輔、怪我は無かったか。
それは… どうした。やられたのか。」
龍雄は真輔の顔のあざの名残や両手首のあざを見ている。
「警官にやられた。
あいつらバカだから、奴らは逃げてしまった。」
病院ではリストバンドをはずしていた真輔、
龍雄は目敏く見つけた。
首のアザも手首の痕も薄くなっているが…
肌が白いからまだ目立っている。
龍雄の声は弱々しいが、
それでも兄貴のように二人を見て、
奴らとやりあった真輔を気遣っている。
それが龍雄だ。