「この小僧も遊んでやれ。」
と、リーダー格の男が、
ふてぶてしい態度で面倒くさそうな声を出した。
ちょっといたぶってやれば怖さがわかるだろう、
と思っていたようだ。
が、真輔は病弱だったということはともかく、
運動神経、反射能力、瞬発力は格別なものが備わっていた。
その気になれば剣道は強かった。
本格的に試合をしたことはないが、
祖父に教えられた通りの形を、
素早い動きと精神力で威圧して、
鋭い気合で一人ずつ倒している。
木刀を構えれば心は剣士だ。
それでも、やはり多勢に無勢、
二人がかりで襲われて羽交い絞めにされてしまい、
背中と腹を撲られてしまった。
ここで負けるわけには行かない、
とばかりに反撃して、
落ちていたパイプをまた拾い、
気を持ち直して構えた、その時…
「こら、何をしているのだ。動くな、警察だ。」
振り向いた真輔の目に数人の巡査の姿が映った。