クラスを見渡しながら自分の席に着くと、1人の女の子が近寄ってきた。
私よりも少し高めの身長。
細くて白い脚。
ミディアムヘアの可愛い女の子。
「あたし、心音。えっと…矢代、さん?
これからよろしくね。」
私の前の席に座って優しく微笑む。
微笑んだ時に出来るえくぼが可愛らしい。
「え、あ…よろしくね!
あと…矢代さんじゃなくて桃花でいいよ?よろしくね。」
い、言えた…。

言いたくてもいつも言えなかった言葉。
『名前で呼んでいいよ』って。
『仲良くしてね』って。
言えなくて、いつも“矢代さん”だった。
寂しい寂しい中学校生活だった。
卒業出来るのが嬉しかった。幸せだと思った。
だけど高校こそは…
涙を流して卒業したい。嬉し涙ではなく、悲し涙。
それが…私の夢。願い。