CANDY POT~キャンディーポット~【完】

『えーっ尋と出会ったのは、尋の会社のパーティーでした。あたしは偶々、お父様の付き添いで行ったんですけど・・・スピーチする尋に・・もう、一目ぼれでして.....』


「芽依さんの、ノロケ話じゃない?これ・・・」

「・・・だね」

芽依さん・・・何時間、尋道さんの事、話すんですか??


かれこれ、2時間....尋道さん、苦笑いですって!!


でも、尋道さんの事を話す芽依さんは


とっても可愛く見える。

恋をして、一生この人についていこうと思った....


って芽依さんは最初に言ってたけど


私もそうだった。


高校の時、全部全部が運命だって男拒否症の私が人を好きになって


朱雀は運命の人だって....そう思って。
高校生活の一日一日が、凄く早く感じた。


朱雀と一緒にいるだけで、心があったかくなって・・・

心が満たされて・・・

喧嘩することがあっても


ちゃんと、笑って仲直り出来た。


それは、明音や芽依さんや・・・長谷川君がいたからであって.....


皆の支えがあって私たちは、こうして愛しあるんだって


ずっと感じてた。



みんながあっての、私たちって.....



だから、結婚しようって朱雀に言われた時は


本当に本当にうれしくて涙が止まらなかった.....


2人で、ずっと暮らしていけるんだって・・・


でも、現実はそんなに甘くなかった。


すぐに結婚なんてできなくて、1年の同居生活をして考えてみろって


その話を聞いたときは、一年たてば結婚できるんだって嬉しくて仕方なかったけど・・・・


今となっては、ケンカが絶えなかったり....

お互い仕事が忙しくてすれ違った時期を長かったし....



正直、不安が募るばっかりだった。
【好き】だけじゃ・・・どうしようもならないこと・・・あるよね?


世の中、そんなに簡単じゃない.....


それに、朱雀は仕事で海外行きが多いし....

不安でいっぱいのまま結婚していいの?

・・・すぐに、離婚しちゃうの.....


あー・・・なんで自分は悪い方にばっかり考えてしまうんだろう


変われてなんかいないの?


全部が全部・・・私のせい・・・かぁ~



あの時から、変われたと思った私は


嘘だった・・・


勘違いだった・・・



の、かな?



それは、私にとっての最大の欠点であり


相手を傷つける事になる......
結婚って・・・簡単じゃないんだなぁ~


――――――――ゴオーーーーーン


「な・・・何っ!!??」


「琴梨・・・・天井が・・・開いていく.....」

「えっ!?」


本当だ....天井が蜜柑の皮みたいに開いていく。


一枚一枚、少しずつ青空が見えてきて、それに・・・


「明音・・・ヘリコプターの音、しない?」


「へ!?・・・・・する...ヘリコプターだ!!」


やっぱり



ヘリの音が段々近づいてくる。


会場にいる人みんなが天井を見上げて、あんぐりしてる。


『えっ!?何・・・これ?・・・・尋、サプライズ?』

えっ!芽依さんじゃないの??

『俺・・・知らないけど?』

尋道さんでもないの???



じゃあ・・・・誰??
――――――ブロロロロロロロロッ!!!!


『み・・・皆さん、この状況を知ってる方いらっしゃいますかーーー??』


シ―――ン


『・・・・だよね~、ほんっっっっとに尋じゃないのよね?』

『俺は知らないって』

『あーーーーーーー分かんない分かんないーー!!』

芽依さん・・・落ち着いて~~


「琴梨・・・もしかして、殺人事件があったとか?」

「いやいやいや~さすがにそれは・・・・。」

明音もおかしくなってきた。



そうしている間にも天井は完全に開いていて


ヘリコプターの音が大きすぎて耳を塞いでいないと


うるさ過ぎるくらいだった。
「―――――――りぃぃぃぃ!!」


「なんか・・・声しなかった?」

「・・・したような、しなかったような?」

明音はあんまり聞こえなかったのか......


でも、私は聞こえた.....


朱雀の声を




空耳かもしれないけど・・・朱雀の声に聞こえた。


『みなさーーん!!態勢を低くしてくださーーーい!!何かが降ってきますよ~~』

「芽依さん!爆弾みたいなこと言うのやめません!?」

明音のツッコミが入ると、会場にいる人みんなが上を見上げ



「うわぁ~~~なんか・・・降ってくる」

「ちょっと、何々~~??」

「サプライズーーー??」

口々に勝手な事を言い出した。


『だーかーら、サプライズじゃないよ!?俺、知らないかんね!?』

尋道さんも尋道さんで焦って大変そうだ。


「ねぇ・・・琴梨....これって、花びら・・かな?」

「えっ!?・・・・ホントだぁ・・・桜の花びら」


ヘリコプターから桜の花びらが降ってくる。

『これ・・・桜吹雪だ・・・』

芽依さんがボソッと言った。


ってかいい加減、2人ともマイク離したらどうですか?


「桜・・・吹雪・・・」

「琴梨....綺麗だね」


会場にいる人たち皆、手を挙げている。
「琴梨ーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


「す・・・ざく?」


絶対、今・・・呼ばれた....


朱雀に、琴梨って呼ばれた。


上を見てみると、ヘリコプターからはしごのようなものが降りてきて

誰かが降りようとしている。


「ちょっと・・・あれ、朱雀?」

「へ!?うっそ~~~」

なんで明音が異常なほどハシャぐのよ?


『皆さま上をご覧ください、琥城 朱雀君が降りてきますよ』

「芽依ーーみんな上、見てるぞ~~」

『あはっそうだね』

一人の上級生が芽依さんにツッコミを入れた。


芽依さん・・・
芽依さん、何か知ってる?


―――――――ブロロロロロロロロロロロロロッ!!


「琴梨ーーーーー、俺とっ結婚して下さい!!!!!!」


「・・・・・はぁ!?」

今・・・なんて言った?


朱雀・・・なんて言った??


「琴梨・・・返事は?」

「へ?・・返事?」

桜吹雪で良く見えないけど、声は聞こえた。


『結婚して下さい』


俺とって・・・朱雀と



だよね?



「琴梨?・・・好きで人は変われるの....今の気持ちで動くってことも大事なんだよ?」


なんで・・・私の考えてること....



「・・・・うん。」


「私と、結婚して下さい!!!」

これが・・・今の素直な気持ち....


これから何があっても



どんなにつらくても・・・


朱雀となら乗り越えられる



そんな気がするの。



だから・・・


だから・・・・



「結婚して下さい!!」