CANDY POT~キャンディーポット~【完】

「おめでとう、明音。」

それが、明音のいいところだよね....

相手の事もしっかりと考えて、自分の答えを出す。


思いやりがある、明音が大好き・・・だから


「ありがとう・・・琴梨。琴梨は、朱雀クンとはどうなってるの?」

「え~っとね、もう少しで結婚すると思う。」


まだ、この段階では『すると思う』。


結婚したいとは思う・・・でも、どこか不安な部分があって・・・

高校の時とは全く違う。


一緒にいたいだけでは、片づけられないような

このままやっていけるかどうか


この1年、このことばっかり考えてきた。
朱雀の事は大好きだけど。

好きだけで、大丈夫なのか・・・


好きだけで


今のこの気持ちだけで・・・決めていいのか....


「琴梨に逢いたくてしょうがなかったけど・・・ずっと我慢してた。もう、いいよね?」


「・・・明音....」

明音の瞳には涙があふれていた。


「もう・・・我慢しなくていい・・・よね?ずっと、そばに・・いてもいい・・よね?」

あふれた涙が頬を伝って床に落ちる。


「琴梨に全部、全部・・話して・・・昔みたいに・・・仲良く・・しても・・・いいよね?」



「・・・ずっと、そばにいていいよ.....明音」

その瞬間、明音の香りがふわぁっと感じて


2人で抱き合っていた。


「琴梨ちゃーーーーん!明音ちゃーーーーん!!早く~~」

へ?

っ・・芽依さん....ドレス、踏んでますけど?

「さすが、芽依さんだ・・・っっ!?」

「明音?・・大丈夫?」

「あははっ大丈夫大丈夫、何時もの事だから!」

何時もの事・・・?

「・・・明音、妊娠してるの?」

明音のお腹は、膨らんではないように見えたけど・・・


「やっぱりわかった?今ね、7週目。」

「なな・・・お腹全くわかんないけど!?」

「でも、これから・・・凄く膨らんでいくんだって」

「そうなんだ・・」


明音・・・お母さんなんだ...

「ゆっくり行こう?」

「ありがとう・・・琴梨は優しいね。琴梨のそーゆーとこ、大好きだよ」





「・・・2人とも、遅いって~」

やっとのことで、芽依さんとこに着いたんだけど・・・

怒ってるね.....

「すいません・・・」

「琴梨さんが謝る事ないから・・・ごめんね、芽依の我がままに付き合ってもらって」

尋道さん....

凄く優しいよね・・・こんな人が芽依さんの旦那さんだなんて・・・


ちょっと不思議な組み合わせかも?



「明音ちゃーーん、ちょっと前に話したっきり逢ってなかったよね?」

「そうですね、お久しぶりです。そして、おめでとうございます。」

「あっ言うの忘れてた・・芽依さん、尋道さん、おめでとうございます」

一番に言わないといけない事だったよね・・・


すいません、芽依さん。


「ありがとーーーっ明音ちゃんも、おめ・・っ」

「あっ大丈夫です。琴梨に、ちゃんと結婚の事話しましたから」

「そっか~良かった良かったー」

芽依さんも、心配してくれてたんだね....


ありがとう、芽依さん。
「あっ!!そうだ、朱雀君ね用事があって、ちょっと抜けるって言ってたわ」

「えっ!?・・・そういえば、途中で離れちゃったんだ。」

それにしても、用事って何?


今日は、仕事も休んだって言ってたけど・・・急に仕事が入っちゃったのかな?


そうだったら、直接私に言ってくれればよかったのに......


私って・・・役立たずなの・・?


信用されてないから・・・芽依さんに言ったの?


やっぱり、駄目だなぁ~・・・・私って。



「よしっじゃあ、結婚式始めていいですかーー??」

いきなり芽依さんがマイクを持ち叫んだ。


「はーーい!!」


「始めていいよーーー!!」


さすが、尊敬されている生徒会長ランキングナンバー1の会長。


みんなテンション高い
「ねぇ琴梨」

「ん?」

芽依さんたちが盛り上がっている間に明音が小声で話してきた。

「あたしね、まだ結婚式してないんだ・・・結婚式は絶対に琴梨に来てほしかったから......来てくれる?」


「・・・あたりまえ、無理やりにでも行くよ!」

「ありがとう!それじゃあ、芽依さんを祝いに行こっ!!」

そうして、芽依さんの結婚式が始まった。


明音がいなかったら・・・今頃私は何をしているだろう?


寂しい時、悲しい時、辛い時・・・嬉しい時、楽しい時。



全部...全部を一緒に過ごしてきた心友。



明音には一生かかっても感謝しきれないくらいだよ



大好きだもん!
『えーっ尋と出会ったのは、尋の会社のパーティーでした。あたしは偶々、お父様の付き添いで行ったんですけど・・・スピーチする尋に・・もう、一目ぼれでして.....』


「芽依さんの、ノロケ話じゃない?これ・・・」

「・・・だね」

芽依さん・・・何時間、尋道さんの事、話すんですか??


かれこれ、2時間....尋道さん、苦笑いですって!!


でも、尋道さんの事を話す芽依さんは


とっても可愛く見える。

恋をして、一生この人についていこうと思った....


って芽依さんは最初に言ってたけど


私もそうだった。


高校の時、全部全部が運命だって男拒否症の私が人を好きになって


朱雀は運命の人だって....そう思って。
高校生活の一日一日が、凄く早く感じた。


朱雀と一緒にいるだけで、心があったかくなって・・・

心が満たされて・・・

喧嘩することがあっても


ちゃんと、笑って仲直り出来た。


それは、明音や芽依さんや・・・長谷川君がいたからであって.....


皆の支えがあって私たちは、こうして愛しあるんだって


ずっと感じてた。



みんながあっての、私たちって.....



だから、結婚しようって朱雀に言われた時は


本当に本当にうれしくて涙が止まらなかった.....


2人で、ずっと暮らしていけるんだって・・・


でも、現実はそんなに甘くなかった。


すぐに結婚なんてできなくて、1年の同居生活をして考えてみろって


その話を聞いたときは、一年たてば結婚できるんだって嬉しくて仕方なかったけど・・・・


今となっては、ケンカが絶えなかったり....

お互い仕事が忙しくてすれ違った時期を長かったし....



正直、不安が募るばっかりだった。
【好き】だけじゃ・・・どうしようもならないこと・・・あるよね?


世の中、そんなに簡単じゃない.....


それに、朱雀は仕事で海外行きが多いし....

不安でいっぱいのまま結婚していいの?

・・・すぐに、離婚しちゃうの.....


あー・・・なんで自分は悪い方にばっかり考えてしまうんだろう


変われてなんかいないの?


全部が全部・・・私のせい・・・かぁ~



あの時から、変われたと思った私は


嘘だった・・・


勘違いだった・・・



の、かな?



それは、私にとっての最大の欠点であり


相手を傷つける事になる......