あっ!そういえば、まだ明音と会ってない。
電話してみようかな?
どうせ、芽依さん達はまだ話しているだろうし。
「琴梨?・・・琴梨?」
「へ・・・?....明音」
携帯電話を落としそうになって慌てて持ち直した。
「うわぁ~琴梨だよね?・・・久しぶりだね」
「・・・・うん。」
急に声をかけられてビックリしたのもあるけど・・・
それよりビックリしたのは
「明音・・・結婚した?」
左手の指輪だった。
「え?・・・・そうだよ。」
明音は優しく微笑んで指輪をなでた。
「教えて・・・くれなかったね」
「ごめんなさい。芽依さんから聞いてさ・・・琴梨達は同居して大変だって。だから、心配掛けちゃいけないかな~って思って。」
その時の明音の顔はどこかさびしそうな顔だった。
「おめでとう、明音。」
それが、明音のいいところだよね....
相手の事もしっかりと考えて、自分の答えを出す。
思いやりがある、明音が大好き・・・だから
「ありがとう・・・琴梨。琴梨は、朱雀クンとはどうなってるの?」
「え~っとね、もう少しで結婚すると思う。」
まだ、この段階では『すると思う』。
結婚したいとは思う・・・でも、どこか不安な部分があって・・・
高校の時とは全く違う。
一緒にいたいだけでは、片づけられないような
このままやっていけるかどうか
この1年、このことばっかり考えてきた。
朱雀の事は大好きだけど。
好きだけで、大丈夫なのか・・・
好きだけで
今のこの気持ちだけで・・・決めていいのか....
「琴梨に逢いたくてしょうがなかったけど・・・ずっと我慢してた。もう、いいよね?」
「・・・明音....」
明音の瞳には涙があふれていた。
「もう・・・我慢しなくていい・・・よね?ずっと、そばに・・いてもいい・・よね?」
あふれた涙が頬を伝って床に落ちる。
「琴梨に全部、全部・・話して・・・昔みたいに・・・仲良く・・しても・・・いいよね?」
「・・・ずっと、そばにいていいよ.....明音」
その瞬間、明音の香りがふわぁっと感じて
2人で抱き合っていた。
「琴梨ちゃーーーーん!明音ちゃーーーーん!!早く~~」
へ?
っ・・芽依さん....ドレス、踏んでますけど?
「さすが、芽依さんだ・・・っっ!?」
「明音?・・大丈夫?」
「あははっ大丈夫大丈夫、何時もの事だから!」
何時もの事・・・?
「・・・明音、妊娠してるの?」
明音のお腹は、膨らんではないように見えたけど・・・
「やっぱりわかった?今ね、7週目。」
「なな・・・お腹全くわかんないけど!?」
「でも、これから・・・凄く膨らんでいくんだって」
「そうなんだ・・」
明音・・・お母さんなんだ...
「ゆっくり行こう?」
「ありがとう・・・琴梨は優しいね。琴梨のそーゆーとこ、大好きだよ」
「・・・2人とも、遅いって~」
やっとのことで、芽依さんとこに着いたんだけど・・・
怒ってるね.....
「すいません・・・」
「琴梨さんが謝る事ないから・・・ごめんね、芽依の我がままに付き合ってもらって」
尋道さん....
凄く優しいよね・・・こんな人が芽依さんの旦那さんだなんて・・・
ちょっと不思議な組み合わせかも?
「明音ちゃーーん、ちょっと前に話したっきり逢ってなかったよね?」
「そうですね、お久しぶりです。そして、おめでとうございます。」
「あっ言うの忘れてた・・芽依さん、尋道さん、おめでとうございます」
一番に言わないといけない事だったよね・・・
すいません、芽依さん。
「ありがとーーーっ明音ちゃんも、おめ・・っ」
「あっ大丈夫です。琴梨に、ちゃんと結婚の事話しましたから」
「そっか~良かった良かったー」
芽依さんも、心配してくれてたんだね....
ありがとう、芽依さん。
「あっ!!そうだ、朱雀君ね用事があって、ちょっと抜けるって言ってたわ」
「えっ!?・・・そういえば、途中で離れちゃったんだ。」
それにしても、用事って何?
今日は、仕事も休んだって言ってたけど・・・急に仕事が入っちゃったのかな?
そうだったら、直接私に言ってくれればよかったのに......
私って・・・役立たずなの・・?
信用されてないから・・・芽依さんに言ったの?
やっぱり、駄目だなぁ~・・・・私って。
「よしっじゃあ、結婚式始めていいですかーー??」
いきなり芽依さんがマイクを持ち叫んだ。
「はーーい!!」
「始めていいよーーー!!」
さすが、尊敬されている生徒会長ランキングナンバー1の会長。
みんなテンション高い
「ねぇ琴梨」
「ん?」
芽依さんたちが盛り上がっている間に明音が小声で話してきた。
「あたしね、まだ結婚式してないんだ・・・結婚式は絶対に琴梨に来てほしかったから......来てくれる?」
「・・・あたりまえ、無理やりにでも行くよ!」
「ありがとう!それじゃあ、芽依さんを祝いに行こっ!!」
そうして、芽依さんの結婚式が始まった。
明音がいなかったら・・・今頃私は何をしているだろう?
寂しい時、悲しい時、辛い時・・・嬉しい時、楽しい時。
全部...全部を一緒に過ごしてきた心友。
明音には一生かかっても感謝しきれないくらいだよ
大好きだもん!
『えーっ尋と出会ったのは、尋の会社のパーティーでした。あたしは偶々、お父様の付き添いで行ったんですけど・・・スピーチする尋に・・もう、一目ぼれでして.....』
「芽依さんの、ノロケ話じゃない?これ・・・」
「・・・だね」
芽依さん・・・何時間、尋道さんの事、話すんですか??
かれこれ、2時間....尋道さん、苦笑いですって!!
でも、尋道さんの事を話す芽依さんは
とっても可愛く見える。
恋をして、一生この人についていこうと思った....
って芽依さんは最初に言ってたけど
私もそうだった。
高校の時、全部全部が運命だって男拒否症の私が人を好きになって
朱雀は運命の人だって....そう思って。
高校生活の一日一日が、凄く早く感じた。
朱雀と一緒にいるだけで、心があったかくなって・・・
心が満たされて・・・
喧嘩することがあっても
ちゃんと、笑って仲直り出来た。
それは、明音や芽依さんや・・・長谷川君がいたからであって.....
皆の支えがあって私たちは、こうして愛しあるんだって
ずっと感じてた。
みんながあっての、私たちって.....
だから、結婚しようって朱雀に言われた時は
本当に本当にうれしくて涙が止まらなかった.....
2人で、ずっと暮らしていけるんだって・・・
でも、現実はそんなに甘くなかった。
すぐに結婚なんてできなくて、1年の同居生活をして考えてみろって
その話を聞いたときは、一年たてば結婚できるんだって嬉しくて仕方なかったけど・・・・
今となっては、ケンカが絶えなかったり....
お互い仕事が忙しくてすれ違った時期を長かったし....
正直、不安が募るばっかりだった。