CANDY POT~キャンディーポット~【完】

「でもね、優子。優子のお陰でかけがえのない人に出会えて、優子に感謝した事もあった。」



怖くて・・・辛くて・・・絶望を味わったときに


谷野 芽依という、大事な大事な人に出会えた。



「その人は、初対面の私を妹みたいに接してくれて・・・人生、まだ終わってないのかなぁ~って思えた。」



芽依さんと出会った、あの日。



芽依さんのお陰で今は、夢森学園の生徒としてここにいる。



私の力じゃどうしようもなかったのに



「ねぇ、優子。あの後....どうなったの?」


「・・・・あの後は.......」


この質問は、聞くのには


とっても辛いけど


今、聞かなきゃ・・・もう一生聞けない気がする。



そこから、優子は涙を流しながらあの後を教えてくれた。





「・・・・・ごめんなさい、琴梨!!」


全部を話し終えた優子は


最後に、もう一度


深々と頭を下げ


私に謝った。
優子は言ってた....

あの日から、大切なモノを失ったと...

それは、いつも近くにあるようで


ホントは近くには無く、手の届か無かったモノだと......


「優子・・・残念だけど、私は優子を許す事は絶対にできない。いくら謝られてもね。その代わりって言っちゃなんだけど、『あの日』を忘れる事は出来る。もう、無かった事にしよう。」


「無かった事なんて・・・あたしは....」



「うん。でもね、お互いに変わらなきゃ・・・ね?もう行っていいから。優子も変わってね!私も大切な人を見つけて変われる事が出来たから・・・優子も見つけなよ」



「琴梨・・・・ごめんなさ・・・っ・・ありがとう、琴梨!」


そう言って優子は走って行った。
「甘いな~~琴梨は!」


「ま、それが琴梨のいいとこでもあるんだと思うけど?」


「っうわあっ!!」


優子の背中を眺めていると、いきなり後ろから朱雀と明音が立って話していた。


「・・・全部、聞いてたわけ??」


「まぁ~ね一通りはね!」


うっそ~~


恥ずかしいって・・・・



でも


「これが私だから!」


「何よ、いきなり・・・」


誰が何と言おうと私は私だから。
「ははっさすが琴梨!」

「でしょ~~??」


こうやって、大切な人と笑いながら話せる。



とっても素敵だと思う。



当たり前のようで




私にとって当たり前じゃなかったから......



私は朱雀の



『笑顔』で


何でも出来そうな気がするよ?



空でも飛べちゃうかもね!


大切な人のいろいろな顔をもっと、見てみたいって思うようになった私は。



恋する乙女



だよね?
「ねぇ、朱雀・・・ぎゅ~ってして」

「・・・はぁっ!?」

「ちょっと・・・・昼間っから何やって・・・」


大切な人が傍にいる。


私を『好き』って言ってくれる人が傍にいる。



もう、何も怖くないよ?


今が・・・・こんなに幸せだから。



信頼できる人がこんなにも近くにいてくれるって



こんなにも、胸があったかくなる。



初めての感覚で味わったことのない感情で・・・・



絶望を味わった私は、もう逃げないから。


これ以上の苦しみはもう・・・無いと思うから。


私は、頑張ったよね?


最後まで・・・頑張ったよね。


「め・・芽依さん!?」


「あらあら~~青春中だった??お邪魔するよーー」


「うわっ生徒会長まで!?」


「芽依さん・・・何かニヤけてる・・・」


ねぇ、神様


人間、辛い事を経験した後には


絶望を味わった後には



とびっきりのプレゼントをくれるんだね。


たとえ小さな喜びでも今の私は何にも代えられないほどの『喜び』です。



誰も、迷惑をかけずになんか生きていけない。

これを、大切な人に教わりました。


いつもと変わらない日常


当たり前の毎日



全部が変わりました。


神様・・・



「ありがとう・・ございます。」


「えっ?誰に言ったの?」


「・・・皆に、私にかかわってくれた皆に言ったの」


「琴梨、おいで・・・ぎゅ~なんだろ?」


「朱雀・・・・うん!」


一生出来ないと思った。


一生しなくていいと思った『恋』を


今は全力で命のともしびが消えない限り


恋をする乙女に・・・・


ううん、『恋をした乙女』に.....


私はなったのかな?

「琴梨・・・苦しいって・・」

「あ~~あ~~、お熱いお二人のようねー!」

「ですよね~芽依さん!!昼間っからー」


お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん......

育ててくれてありがとう。さんざん迷惑かけて、ごめんなさい。


そして・・・これからも、いっぱい迷惑をかけると思うけど・・・・

よろしくお願いしますっ!


霧咲 琴梨という人物をこの世に産んでくれて、ありがとう!


今まで以上に精一杯生きていきます。


「大好きだよ、朱雀」

「あぁ、俺も琴梨の事・・・大好きだし」

そうして、二人は見つめあって・・・・・


甘い、あま~いキスを交わしました。


「ちょっとーーー琴梨ー!!」

「あらあら~お熱いねぇ~」

明音も芽依さんも私達を冷ややかな目で見てくる・・・・


「朱雀も、明音も、芽依さんも・・・・みんな大好きっ!!」

「ちょっと~何で、生徒会長が最後なの!?」

「まぁまぁ芽依さん~」

「これからも、よろしくな琴梨!」


朱雀は私をぎゅ~って抱きしめる。