みんなビックリしてるよ。
廊下を全速力でダッシュして
階段もこけそうになりながら、駆け下りてるんだもん。
『青春』ってやつかな?
私の青春は遅咲きだね。
だって
たった今が
私にとって
・・・ううん。
私にとっての青春は
私が生きている時間
全部だ。
着いた・・・
さっきまでとは全然違う・・・
キラキラとか全然してなくて
張りつめた空気が全体に広がってるような感じ。
あの時、優子も夢森に受験してたなんてビックリした。
私を探してるって・・・・
私は知らないうちに優子から避けてきた。
ずっと
逃げてきたし。
最悪なのかな
私は.....
「琴梨!!」
「・・・優子。」
こげ茶色のロングヘヤーは・・・・やっぱり優子だ.....
私よりも少しだけ背が高くって
大人びた顔立ち
全然変わって無い
あの時のままの優子だ。
「・・・・琴梨、覚えてる?」
「覚えてるよ。私に何か用でもあった?」
ついつい、怒り口調になってしまう。
「琴梨に・・・謝ろうかと思って・・・さ。」
「私に?」
優子はうつむきながらゆっくりと言った。
ロビーは私達だけで
張りつめた空気が余計にきつくなる。
「全部・・・聞いたんだ。・・・ごめんなさい!!」
そう言って思いっきり頭を下げて
「ひっく・・・っ」
泣いていた。
「優子・・・優子、顔あげて。話したい事があるから」
逃げてばかりじゃいけない・・・・
それを改めて知った。
「あの日から、私は変わっていったの。そして、いろいろな事を考え始めた。友達、家族、周りのみんな....それでね、気付いた事もあった。」
「気付いた事・・・・?」
優子は顔を上げて泣きながら聞いてきた。
「そう、私は周りに迷惑ばっかかけてきたんだなぁ~って自分ひとりじゃ何もできなくて・・・すぐ逃げちゃうんだな~って」
あの日から
絶望と
自分の弱さ
孤独を
味わったの。
そして
自分の無力さを思い知った。
「でもね、優子。優子のお陰でかけがえのない人に出会えて、優子に感謝した事もあった。」
怖くて・・・辛くて・・・絶望を味わったときに
谷野 芽依という、大事な大事な人に出会えた。
「その人は、初対面の私を妹みたいに接してくれて・・・人生、まだ終わってないのかなぁ~って思えた。」
芽依さんと出会った、あの日。
芽依さんのお陰で今は、夢森学園の生徒としてここにいる。
私の力じゃどうしようもなかったのに
「ねぇ、優子。あの後....どうなったの?」
「・・・・あの後は.......」
この質問は、聞くのには
とっても辛いけど
今、聞かなきゃ・・・もう一生聞けない気がする。
そこから、優子は涙を流しながらあの後を教えてくれた。
「・・・・・ごめんなさい、琴梨!!」
全部を話し終えた優子は
最後に、もう一度
深々と頭を下げ
私に謝った。
優子は言ってた....
あの日から、大切なモノを失ったと...
それは、いつも近くにあるようで
ホントは近くには無く、手の届か無かったモノだと......
「優子・・・残念だけど、私は優子を許す事は絶対にできない。いくら謝られてもね。その代わりって言っちゃなんだけど、『あの日』を忘れる事は出来る。もう、無かった事にしよう。」
「無かった事なんて・・・あたしは....」
「うん。でもね、お互いに変わらなきゃ・・・ね?もう行っていいから。優子も変わってね!私も大切な人を見つけて変われる事が出来たから・・・優子も見つけなよ」
「琴梨・・・・ごめんなさ・・・っ・・ありがとう、琴梨!」
そう言って優子は走って行った。
「甘いな~~琴梨は!」
「ま、それが琴梨のいいとこでもあるんだと思うけど?」
「っうわあっ!!」
優子の背中を眺めていると、いきなり後ろから朱雀と明音が立って話していた。
「・・・全部、聞いてたわけ??」
「まぁ~ね一通りはね!」
うっそ~~
恥ずかしいって・・・・
でも
「これが私だから!」
「何よ、いきなり・・・」
誰が何と言おうと私は私だから。