「俺の大好きな琴梨は、世界でたった一人だけなんだよ。全部を含めて大好きなんだ。」
「朱雀・・・」
人を好きになる。
私には
もう一生無理だと誓った、あの日
男の人の、いろいろな部分を知った。
優しいところ
怒るところ
笑うところ
悲しむところ
気持ち悪くて・・・近寄りたくもなかった
『男』に
私は恋をしました。
その、大嫌な『男』に
「うわっ・・・大胆だな....」
「これが・・・・これが私です!!」
「・・・んっ・・」
大嫌いな
大嫌いな『男』に
キス
しました。――――――――・・・・
――――――――・・・・
プルルルルルッ
「うっわぁ!!!!」
油断してた.....
「ちぇっ・・・琴梨じゃん、電話」
「あっ・・・明音だ。もしもー『琴梨ーーーーーーーー!!!』」
デジャブ??
これで、何回目?
「な・・何?」
『何?じゃないでしょーーーーーーが!!!いちゃいちゃすんなーー!!』
は!?
何で???
え?
「・・・な・にが??おっかしいな~~」
ヤバい・・・声が裏返った。
『ふ~~ん、何でわかるかって聞きたい??』
「き・・・聞きたいです!」
『ま・る・ぎ・こ・え!!!!あーーやらし~やらし~』
・・・・・。
「嘘だよね??」
『これが嘘だと思います?何か内容が変わっちゃったから言うけどさ~優子がロビーで呼んでるよ。だって』
「優子が?」
さっきから、考えないようにしてたけど・・・
やっぱり
ちゃんと、話さなきゃ
なのかな
避けては通れない道なんだよね。
「分かった。それじゃあ」
『って待ちなさ・・プツッ』
最後の明音の声は頭に入らなかった。
とうとう、この時が来たんだ・・・・
避けては通れない道に
真っ向から通ろうとするんだよね、私は。
「ねぇ、朱雀・・・ありがとう。大切な事を教えてもらったよ朱雀には」
「今更、感謝かよ?遅すぎだって!」
私がほほ笑むと朱雀は笑顔で私の頭を撫でてくれた。
「やらなきゃ、いけないことがあるんだろ。」
「・・・うん、ずっとずっと避けてきたんだ。でもね、逃げちゃいけないって思ったから。ケジメをつけてくる」
もう、逃げないから
変わるんだ
私は
「行ってこいよ、そんで後悔すんなよ!!」
「行ってきます」
この言葉を胸に刻みながら部屋を出た。
誰もが変われる。
世界でたった一人の私は
大きな一歩を
踏み出そうとしています。
ねぇ、神様
見てますか?
私は変われたよね!
今までの私より
もっと輝いてると思うんだ!
ロビーまでの距離が
ちょっとずつ
ちょっとずつ
縮まっていく。
行きかう人の顔なんか全く頭に入らないくらいに
緊張してるし
胸が張り裂けそう
私の足跡が
どんどん
早くなっていく。
みんなビックリしてるよ。
廊下を全速力でダッシュして
階段もこけそうになりながら、駆け下りてるんだもん。
『青春』ってやつかな?
私の青春は遅咲きだね。
だって
たった今が
私にとって
・・・ううん。
私にとっての青春は
私が生きている時間
全部だ。
着いた・・・
さっきまでとは全然違う・・・
キラキラとか全然してなくて
張りつめた空気が全体に広がってるような感じ。
あの時、優子も夢森に受験してたなんてビックリした。
私を探してるって・・・・
私は知らないうちに優子から避けてきた。
ずっと
逃げてきたし。
最悪なのかな
私は.....