藤原裕也
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結局、2人と1匹で、近くの総合病院へ行った。

その後、車で家の前まで送ってもらい、帰り際に教えてもらった彼の携帯の番号と、メールアドレス。

…それと。例の黒い鞄。

「よかったらもらってくれない?記念だと思って。」

そう言って、彼が鞄を開けると、中には綺麗に磨かれたトランペットが入っていた。

「売っちゃっても構わないよ。」

彼はバタンと鞄を閉じ、私の前にそれを突き出し、どうぞと言う。


「大事な物なんじゃないんですか?私、貰えません。」

「いいんだ。俺の事助けると思って貰ってよ。」

「いいえ!だめです!」


思いの外、言い方がきつくなってしまったようで、彼は驚いてしまった。


私には、彼の投げやりな態度が気になっていた……。
だから受け取れない。そう思ったのだった。

「……でも…預かっておくだけならいいですよ。」


彼は、切れ長な目で私を見詰めてきた。

少しの間黙ってしまってから、微かに彼の顔が笑顔になる。


「ありがとう。じゃ、連絡先教えておく。それでいいよね。その時がきたら…ちゃんと取りに来るから。」