「…はいっ?」


眠たそうな声…。時計は12時を過ぎている。


「おはよう。私。なつみ。」

受話器の向こうでもぞもぞと動く音がする。

「あっ…おはよう。…ごめん。もう時間?昨日徹夜だったから…」

「ううん。まだ時間じゃない…今日のお出かけは中止になったの。」

ふぁぁぁ…澤木君の短いあくびをした。

「昨日話した幼なじみが、今朝犬の散歩の途中で怪我しちゃったんだって。」

へぇぇ…。

興味がなさそうな声…。

「そっか。じゃなっちゃんまたモデルやってよ。仕事休みなんでしょ?」

「また?最近がんばりすぎじゃない?たまには息抜きしないと…。それに、今日は彼女のお見舞いに行こうと思ってるの。だから…また今度ね。」

「そっかぁ…じゃあ、お友達によろしく言っといてね」

彼はつまらなそうに言う。

絵の事以外に全く興味がないんだから…。


「あの絵はどう?完成しそう?」

「まだ…。もうちょっと。学生生活最後の作品になるから、いいものにしたいんだ。手は抜けないね。」


……絵。


あの絵……彼は私をモデルにしていると言う……。


水辺に座っている女の子の絵。