「送っていってあげるよ。」

「えっ…」

「俺、ここまで車で来てるんだ。ちょっと待っててよ。今取りに行ってくる。」

その人は、私をコンクリートの上にもう一度座らせると、すっと振り向いて走り出そうとした。

「まってください!!ほんとうに大丈夫ですから!」

がたんっがたんっ!

突然大きな音がした。

それはももこが、何かなにかを引きずっている音だった。

「ももこ!?」

男の人は、ふふっと笑っている。

思いの外、綺麗な横顔。顎の形がきれいで、首が長い。
黒くてまっすぐな、少し長い髪。


「遊んでほしいんだな。きっと…。」

ちょっと呆れながら、やさしそうな声でそう言った。

「…ですね…。」

私が、思わずそう言うと、その人はちょっとうれしそうにこちらに笑いかけてきた。

「あの…黒い大きな…箱?あなたのですか?」

それは以外と大きかった。

「そうだよ。実は大事な商売道具…だったんだけどもう必要ないんだ。よかったらあげよっか?」

「えっ?」