テーブルに戻ると、もうみかはいなくなっていた。

「…みかちゃん帰っちゃったよ?」

コーヒーカップを持ち上げたままの姿勢で悠がぽつりと言った。

「…そう…。」

彼の向かいに腰をかける。

悠は、私と目を合わせようとせずに、スプーンでコーヒーをかき混ぜ始めた。

私は、ぼんやりと彼を見つめていた。

「そっくりだったでしょ?」

私から口を開いた。

悠はコーヒーをかき混ぜるのを止めて、上目使いで私を見つめる。

彼の大きな瞳は、気持ちがよく表れる。

うれしい時は、2倍くらい大きくなって、キラキラと光る。

悲しい時は、長いまつげが暗い影を作る。

今は…黒目が灰色に見える。落ち着きなくぐらぐら揺れている。

「私にじゃなく…あの絵…今描いてる絵の子に。みかをモデルにした方がいいかもね。」