窓の外に目を向けると、ニカッと笑う子がこっちを見て手を振っていた。


…あ。あのタメ口くん…


あたしは軽く手を振って、仕方なく前を向いた。



「…じゃぁ、今日はこれで終わり。三年生は明日、明後日と実力テストがあるから勉強しておくように!」



「「「え〜っ?!いきなりテスト?!」」」



クラス中のさっきまでのハイテンションが一気にダウンする。



「山瀬も今日は彼氏に会わずに真っ直ぐ帰って勉強しろよ?」



先生があたしを名指しして言った。



「はい…」



…真っ直ぐ帰っても家には彼氏くんがいるんですけど…?

心の中で呟いてみた。



事情を知るユリだけがあたしを見て笑いを堪えていた。





校舎を出て、今日夕飯なにしよう…なんて考えていると、目の前にさっきのタメ口くんが現れた。




「三年生だったんだ?」



「そうだけど?」


…三年生ってわかってもタメ口なのか。




あたしはそのままタメ口の横を通り過ぎようとする。



「ねぇ、今から帰るだけ?」


…あたしに言ってるのかな…
チラっとタメ口くんを見ると、どうやらやっぱりあたしに言ってるみたいで。



「帰るだけだよ?明日テストだし…」


「今から昼飯行かない?」


「行かない」


即答。



「ねぇ×2!行こうよ!」


タメ口くんはあたしの腕を掴んでブラブラさせる。


…その辺のナンパよりタチ悪い…



「…お勉強しなくちゃいけないから無理!!」


「いいじゃん♪少しくらい♪」


「あのねぇ…」


「コラ!一年!!千秋に近付くな!!俺が中嶋先輩に怒られるだろ!!」


卒業式で奏にあたしの監視役に任命された太一が、あたしの前に現れた。


「そうだよ?千秋には近付いちゃダメなの♪」

ユリも笑って言う。



「え〜っ?!なんで?!」


あたしたちはタメ口をそのまま放置して駅に向かった。


「なんかめんどくさい子だね…」


「…うん」