次の日、サイトウ先生が君に言った。
「ねぇ、タマキくん。そこにある磁石、捨てておいてくれない?
もう古いし、不格好だし、使わないでしょう?」
「あ、そうですね」
君の声は、弾んでいた。
「じゃあ、お願い。少しでも、黒板を広く使いたくて……。
担任のタカダ先生、何か言うかな?」
「何も言わないんじゃないですか?
磁石なら、他にもたくさんあるし。数学は、板書の量多いですもんね」
「そうなの。ごめんね、日直をこき使っちゃって」
「いえ!お安いご用ですよ」
「ありがとう。じゃあ、後はよろしく」
そう言って、サイトウ先生の足音が去って行った。
そして、君の足音があたしの方に近づいてくる。