そうしようというクルキさんに言葉がでなかった。


やがて騒ぎに気づいた隣人が出てきた。


どうしたんだと駆け寄る隣人に、私は何も言えなかったが。


「酔った勢いでからまれました。身の危険を感じたので殴ったまでです」


被害者を装う彼。

いぶかしむ隣人だが、そんなことより救急車と呼んでくれた。


始終私は座るだけ。

念のためと、救急車に乗る彼に同席するためにやっと立てたもの。


「……」


「彩芭、大丈夫?嫌だったろう。もう心配いらないよ」


悪い奴はみんなやっつけたと言わんばかりの表情で、彼は応えた。