「病院行こうか?」


恐怖という感情が一気にわいた。


今、この人は何をした。
今、この人は何を言った。


理解ができない。でも。


「ぐっ」


くぐもった赤松さんの声で我に返る。


クルキさんから赤松さんに近づき、大丈夫ですかと声をかけたが、反応はない。


鼻血は流れっぱなしだ。


「赤松さん、赤松さん!」


「鼻折れた痛みで気絶しているんじゃないかな」


ハンカチで血のついた拳を拭く彼だが。


「クルキさん、それっ」


ハンカチがなくなった手が赤青く腫れていた。


「ああ、ひび入ったかな。本気で殴ったから」


「本気って、痛く……痛くないんですかっ」


「痛いよ。でもスッキリした方が大きい。彩芭を叩いた奴を殴れて。にしても、しくじったな。殴るだけでひび入るだなんて。今度、格闘技でも習うか」