「いつか二人だけの世界を作ろう」
「はい、楽しみに待っています」
「彩芭の願いは俺の願いだよ、きっと叶えてみせるからね」
額にキスをし、彼が立ち上がった。
どうやら帰るらしい。
コートを着て、玄関まで行く彼を見送る。
「じゃあ、また」
「はい」
と、むき出しの廊下まで見送ろうとすれば。
「おー、彼氏かーい?」
廊下でばったりと会ってしまった中年男。
夕日に負けない真っ赤な顔をして、ひらひらと手を振っていた。
「赤松さんのところの……」
確か、旦那さん。
同じアパートの階に住む人だ。
「おう!覚えててくれたか!」
威勢いい声を出し、近寄ってくる赤松さん。