「さっきさ、藤堂さん、赤ん坊に手を振っただろう。あれも愛情かな」
「え……まあ、そうですね」
「そうか。俺にはそれが感じられなくてね。逆になんか、いらついてしまった」
「いらついたって……」
栂さんがこちらを見る。
なぜ栂さんがいらつくのか私には分からなかった。
「なんででしょうね」
「……、君のせいなのかも」
「私の?」
「ああ、例えば、君があそこにいる子供に愛情を出したなら、俺はいらつく」
あそこと言われ見たのは、お母さんに手を引かれている小さな子供だ。
栂さんが言わんとしていることが分からない。
また視線を戻せば、栂さんは私の手を握った。