カップを置いて、机に手を置く。筋張った男性特有の手に握りしめられたとなると、更に恥ずかしくなる。


「初めてだよ、愛情を感じたのは。そうだ、俺は誰からも愛情を貰ったことがないから、それが何なのか分かっていなかった」


「愛情を貰ったことがない?」


頷く栂さん。

一瞬、愛情の代表的、親はどうしたんだろうかと思ったけど、家庭の事情でも栂さんにはあるのかもしれない。


「接されることはあった。けどみんな、必ず“裏”がある。純粋に優しく接したいと感じられたのは今のが初めてだよ」


うん、すごい。という栂さんにはついていけない感があった。


どれだけ人間らしさが損なわれているのか。


もしや栂さんは壮絶な人生を歩んでいるのか。