手を引いた。
なのに、栂さんが私の手を握る。
宙で止まったままの手。
興味深そうに眺め、握りしめ。
「これが、愛情か……」
手を離された。
――心臓がバクバクだ。
なにこれ、なにこれ、なにこれ!
栂さんに手を握りしめられた。
いや、頬に手を置いた私もすごいけど、まさか栂さん側からこんなことをされるなんて。
慌てが隠せない私と裏腹、栂さんは何事もなかったかのようにコーヒー飲んでいるし。
「あ、あの……」
今のを解説してほしいっ、の言葉が出ない。
「ああ、ごめん。嫌だった?」
「い、嫌じゃないですけど。いきなり……」
「んー、俺にも愛情を感じられるのかと思ってね」