カチャカチャと音が響く中で、優作は違うことを考えていた。



あの時の事を……









彩芽は洗い終わると、優作の異変に気が付いた。




「優作さん?」


優作は彩芽の方へと顔を向ける。




…そうか。コイツが…


「まだ熱あるんですか!?」


「はっ?」


彩芽は優作にオデコをくっつけると、優作は驚いたように彩芽を突き放した。



「な…」


「もう熱下がりましたね。」


「…え?」




「良かったです!私優作さんに助けられてばっかりだったから。」







…なんでコイツは…



こんな風に笑うんだ?




彩芽の笑顔が、優作の心の中をぐるぐると回る。



…コイツは…





「あっ。私もう帰りますね。」



彩芽が立ち上がろうとすると、優作は彩芽の手を掴んで引き寄せた。




「……え……?」






驚いた様子の彩芽の耳に近付くと、優作は口を開いた。







「今日は…ありがとう。彩芽。」







掴んだ手を放すと、彩芽はヨタヨタと後退りする。




「あ…あの……帰りますね!」




そう言うと彩芽は逃げるように部屋を出た。