「ちょっと彩芽。聞いてる?」


肩を掴まれ、私は現実に戻った。


「え?…ごめん。何?」


「もう。どうしちゃったの?ボーッとして。」


友達がそう言うと、私は微笑んだ。


「今日ね…お兄さん来るの。」


顔を少し赤らめて俯く。


「え!?それって…彩芽の初恋の!?」


「こっ声大きいよ!結衣ちゃんっ!」


私はオロオロと周りを見てから、また“結衣ちゃん”に目を向けた。


「頑張ってね!」


結衣ちゃんはそう言って笑いかけた。












見英 彩芽(みはな あやめ)


14歳。



“大人しい子”と周りからよく言われる極普通の女の子。



…この日までは。