今此処で、死ぬわけにはいかないのだから。
血をくれると言うのなら、もらっておけばいい。
この男は自分を利用したいのだ。
ならば、自分もこの男を利用すればいい。
利害は一致している。



「加減……できないかもしれないわ。そのまま死んでしまうかもね」


「どうぞご自由に。だけど俺、そんな簡単にくたばる程、か弱くないよ?」


「後悔しても……知らないわよ」



少女のか細い腕が青年の首に伸びると、彼は満足そうに微笑んで自分の首を少女に近付けた。

さりげなく、少女の体を支えてやる。
傍からみれば愛し合い口付けを交わそうとしている男女に見えなくもないな、とこんな時にくだらない事を考える自分に苦笑する。
実際、そんな甘ったるいものではないが。

温かい、湿ったものが首筋を這った。
くすぐったさに身をよじると、抱きついてくるか細い腕に力が入った。



「動かないで……」



なかなか牙を立てない少女におどけた調子で答える。


「だってくすぐったくてさ。どうしたの?牙を立てる力も残ってないなら、口移しで飲ませてあげようか?」