「それよりさ……早くした方がいいと思うんだけど」
ドクンと心臓が跳ねる。
願ってもない誘いだ。
けれど、信用はできない。上手い話には必ず裏があるはずだ。
何か思惑があるに決まっている。
「信用…できないわね。何が望み?」
「酷いなぁ。疑ってるの?これは完全なる善意からなのに」
「完全なる善意……ね…。血を飲ませた後、何を要求してくるつもりなのかしら」
返答は無い。
沈黙は肯定だ。
ただ、婉然と微笑んでくるだけ。
指先で彼の首筋から鎖骨にかけてのラインをなぞる。指先が感じる、時を刻む生命の音。
自分を抱く腕は力強く温かい。
この腕に抱かれているのは悪くないと、何故だか思ってしまう。
答えは既に決まっている。