「そんな恐い顔しないでよ。別に、死にかけの君に引導渡しに来た訳じゃない」


微苦笑を浮かべ、青年は何の躊躇いもなく血塗れの少女を抱き起こした。



「よご……れるわよ…」



苦痛に眉をひそめ、訝しげに言う少女に、青年は飄々と答えた。



「別に構わないよ。むしろ、美人と"半吸血鬼゙(ダンピ-ル)の血なんて光栄だね」


思わず目を見張って青年を凝視した。
漆黒の瞳が悪戯な色を宿して自分を見つめ返してくる。
あっさりと正体を見破られた。
何故、と疑問が浮かぶが何だか悔しいのであえて言葉にはしない。



「君ってさ、用意周到そうに見えるけど案外ドジな子だよね。゙烙印"を消し忘れてる。これじゃぁ自分の正体晒してるようなものだよね」



青年は胸元を指差し、烙印をなぞって婉然と微笑む。


抜かった………。
どうせ服で見えないだろうと消し忘れていたのだ。
自分の間抜けさに呆れ、嘆息した。

クスクスと、可笑しそうに青年は笑う。