時刻は6時過ぎ。
最終下校時刻はとっくに過ぎている。

『ハァ、ハァ…まだついてくんの?』

顔をしかめなながら、灑梛は呟く。
今は一階なので、今度は手摺を掴んで飛び越えた。

そのまま自分のクラスがある三階へ急ぐ。

――――――――――――ガラッ

教室のドアを開け、鞄を掴む。ベランダの窓を開け、下に飛び降りよう…とした時だった。

窓の鍵に手をつけた瞬間、

「靈羅さん!!」

有沢が入ってきた。
しかし、灑梛は無視して鍵を開ける。窓を開けようとした、その瞬間。

後ろから抱き締められ、ポニーテールをして露になった首筋に、温かい何かが触れた。

『ッ…!?』

バッと後ろを振り返ると、そこには有沢の姿が。
灑梛は何かが触れた首筋に手を当て、キッと睨み付ける。

『いま、何をした?』
「何がって?ただ首筋にキスしただけ」

普通に答える有沢に、灑梛の苛立ちが怒りに変わった。

「さっき言っただろ、靈…灑梛、君が好きだって」
『断った筈だが?』
「うん。確かに、断られたよ」
『なら、なんで…』

瞬間、有沢の唇が歪んだ。欲に掻き立てられた瞳で灑梛を見つめる。

「なんで?君を、襲いたくて」

灑梛の手を掴み、強引に教室を出る。

『放せ!!』

その力は、周りの女子より握力の高い灑梛でさえ振りほどけないほど強かった。

「無理だよ、女の君が、男の俺に勝てると思う?

生徒会室に行こう」

突然歩き出した衝撃で、灑梛は鞄を落とした。
しかし、抵抗する間も無く生徒会室に連れ去られる。







有沢 寛貴…
この中学校の生徒会長であり、誰もが認めるかっこよさ。女子からの人気は半端ない。ファンクラブもあるほどだ。