「香織、今日放課後教室残って?」



「え? 昼休みじゃあかんの?」



次の日、俺は休み時間を見て香織に言った。




長い綺麗な髪を耳にかける仕草さえもドキドキしてしまう。



そんな些細なことで、決心が揺らぎそうになる俺はきっと最悪な男。




ちらほら人が居なくなり静まり返る教室。



俺は固まっていた女子に話しかけた。




「ごめん、この教室使う予定ある?」



派手目な数名の女子。



「別に・・・。 池井君使うん?」



俺が頷くと彼女たちは鞄を持って教室を跡にしてくれた。




「雄? 話ってなに?」



そそくさに教室に入って来た香織。



「今日部活は?」



「休んだ、どうせ勉強せなあかんしね。・・・・でもー、デートしちゃう?」



「・・・・・・・・」



また作り笑い。 冗談を言ってくれている彼女に何一つ気の利いた言葉を返せない。